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No.8 ステンレス(SUS)管なのに給湯から赤水

役に立つ「社長の現場レポート」

最近、給湯管にSUS管を使用しているにも関わらず、赤水が発生するという事例が増えてきている。
給湯設備は昨今では腐食、錆対策からSUS管が多く採用されてきている。

給湯の需要もホテル・病院から介護施設・スポーツセンター・スーパー銭湯、エコキュートまで需要が拡大してきている。SUS管の普及に伴い、以前のような錆に因る配管の閉塞や流量の不足や漏水事故はなくなってきた。
ステンレスの加工技術も向上し、循環ポンプばかりでなく、ボイラーや貯湯タンクまで給湯ライン全てがオールステンレスということが可能になってきた。
それなのに、弊社にはサブコンから「赤水が出るので洗浄して欲しい」という依頼が増えている。

赤水を分析すると、確かに鉄分(全鉄)が多く、着色によるクレームの原因になっている。
オールSUSなのに、どこか腐食し「錆が出てくる」。SUSが腐食していないか調べてみるとSUSの成分であるクロムやニッケルは検出されず、SUSの腐食はまったくみられない。

このような現象が増えてきているのは、なぜだろうか?

鉄錆の発生は酸化によるもので、原因として、塩素など酸化作用のある薬剤・溶存酸素・異種金属接触による電食等が考えられる。酸化のみならず、微生物が関与する還元腐食もあることを付け加えておこう。

さて、SUS管を使用しているのに給湯から赤水が発生するのは、多くの場合、鉄細菌が関与していると考えられる。鉄細菌は土壌菌の一種で嫌気性の細菌である。
腐食に関与することもあれば、長い間には管の閉塞を引き起こすこともある。以前は気づかれなかった鉄細菌の認知度を広めるために、弊社では長年各方面に理解を得られる努力をしてきた。やっと少しずつ注目されてきたのが現状である。

では、鉄細菌はどこから入ってくるのか。鉄細菌はどこにでも存在するありふれた菌である。給湯水に使用する水道水中に存在していたといわざるを得ない。実際、給湯から赤水が発生する現場で、水道水が滞留する受水槽のドレン管から採水すると鉄細菌を確認することができる。
鉄細菌は水道水に含まれる鉄分の酸化電位差をエネルギー源としている。
水道法による鉄分の水質基準は0.3㎎/ℓ以下と定められているが、弊社の経験では0.01㎎/ℓ以下の水質分析値でも鉄細菌による赤水被害が確認されている。

上水になぜ鉄細菌が?

その要因の一つに水道水の消毒に使用されている次亜鉛素酸ナトリウム溶液、つまり消毒用塩素の使用量(添加量)の減少である。消毒用塩素は水に含まれる有機物(全有機炭素)と結合し、発ガン性の危険性が高いトリハロメタン
などの消毒副生成物が生成されるため、水道法で規制されるようになった。

以前は受水槽のマンホールを開けると、ひどいときは目がチカチカするほど水道水には多くの塩素(次亜塩素酸ナトリウム)が含まれていた(0.8~1.2ppm)。現在、東京都の浄水場では消毒用塩素の使用量を少なくし、オゾンによる殺菌処理が主流になっている。
消費者から「安心」「安全」で「おいしい水」に対する要求が高まっているという背景もある。

給水のように一過式の場合、管内に滞留することはほとんど無いため、仮に鉄細菌が混入しても、一時的な現象で着色被害は少ない。問題は給湯水で、系内に鉄細菌が混入すると赤水障害が継続的に発生する。特に夏期に給湯を使わない施設では、給湯水の滞留期間、管内で鉄細菌が増殖し、使い始めの時期に菌の死骸などが出ることもあり、クレームの増加に繋がる。高濃度の塩素水を循環すればよいのではと考えがちだが、SUS管の不動態被膜を破壊し腐食性が増大する可能性が大きい。SUSは残念ながら塩素には弱く、腐食を引き起こす。

鉄細菌によって引き起こされる赤水対策は厄介な問題である。運よく系内の鉄細菌を死滅させても、原水である水道水に混入しているため、給水すれば再び系内に侵入して来る。一度水道管に混入した鉄細菌を死滅することは
不可能に近い。

鉄細菌は人体に害がないので水道法による水質検査項目に入っていない。そのため、水道事業者では特に対策は採っていない。
お勧めできる良い方法は給湯水を滞留させることなく、常に大量に流しておくことであるが、、、、。

残念ながら、根本的な解決法は今のところ見つからない。

弊社ではアジェット工法による給湯管の薬品洗浄を実施しています。少なくとも年に一度は給湯管を洗浄してみませんか。
併せて運用方法を見直すことにより、被害を最小限に抑えることも可能です。
ご相談承ります。